Sが亡くなるまで、ずっとお互い支えあいながらやってきた。
私が失恋したときも、新らしい恋をしたときもSは話を聞いてくれた。
逆にSの恋がうまくいかなかったときや就職で悩んでいたときは私が話を聞いてあげた。
お互い、恋人ではなくても家族愛に近い愛情を持っていた。
今でも覚えている会話。
「なぁ、あたしらって何なんやろうね」
「友達じゃないん?」
「でも友達以上に大切じゃない?少なくとも私はそう思ってるけど」
「んー。そうやなぁ、確かに友達以上かも」
「でもお互い彼氏・彼女おるし、何て言ったらええんやろうね」
「俺は今でも好きやけどなー・・・」
「今さらー(笑)でも私もSのことまだ好きやで・・・」
「・・・(照)」
「ふふ(照)」
「家族みたいなもんかもな」
「うん」
「愛はあるけど、恋人に対する愛とは違うしな」
「そうそう。そういう感じよね」
でも、Sは彼女と別れてから心の調子を崩してしまった。
過食やリストカット。
彼はずっとSOSを出し続けた。
私には電話で話を聞いてあげることしかできなかった。
Sが京都に遊びに来たいと言った。
でも、諸々の事情で京都にSを迎え入れることは叶わなかった。
そのかわり、実家で会おうということになった。
約束の前の週にSから電話があり、実家に帰ったら気分がよくなったから
先に山口に帰るとのことだった。
確かに電話の口調は、リストカットを繰り返して疲れきっていたSとは
全く別人のようだった。
私は少し安心して、でもせっかくなら会いたかったのになと思ったけれど、
Sには、また何かあったら連絡してねと電話を切った。
それがSとの最後の電話だった。
その後しばらくして、Sは亡くなった。
私がSの死を知ったのは、その1ヶ月後だった。